従業員の起こす事件
ここ数年、企業に勤めるアルバイトや社員が遊び気分でSNSなどへ投稿した写真が炎上を引き起こし、商品の廃棄や謝罪、ひどい場合には店舗の閉鎖に追い込まれるなどの事件がいくつも発生しました。
また、業務上の横領などを伝える報道をテレビや新聞、ネットなどで見かけることも少なからずあります。
また、それほど大きな事案でなくとも、遅刻や退職、業務上の不注意などが、取引の停止や契約の不履行になってしまい、結果として会社に損害を与えてことも考えられます。
こうしたことが起こった場合、企業は従業員に対してどこまでの損害賠償請求を行うことはどこまで可能なのでしょうか。
労働基準法と賠償請求
民事裁判などの見方からいえば、損害を与えた従業員に対して企業側は損害賠償を請求することができます。しかし、業務上の損害に対しては利益を得ている企業側もリスクを負う責任があるとする考え方が一般的です。
また、管理・監督する義務もあるので、ある程度賠償が制限されることもあり得ます。実際の裁判例などでも企業側の責任を考慮して賠償額が減額されるなどしているようです。
明らかな犯罪行為の場合
しかし、会社に損害を与えた理由が業務上の横領など、明らかに故意によるものであれば話は違ってきます。悪質性が高く、従業員が故意に会社に損害を負わせるような行為であった場合には全額の損害賠償を請求することも可能でしょう。
賃金との相殺は可能か?
労働基準法第24条の「賃金の支払」を定めた項目ではでは労働者へは賃金を全額支払うことが原則と定められています。
また、労働基準法第16条で、「損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と給与の支払いで賠償を予定することも禁止されています。ですから、会社に与えた損害賠償への補填として、給与から差し引いて残りを支給するやり方は認められません。
企業側も予防措置が必要
企業側も損害をこうむることのないように事前に予防措置を講じておかなくてはなりません。そのために役に立つのが「就業規則」と「労働契約書」です。
就業規則には、「損害賠償額は、実際の損害額の範囲内で双方が協議して決める」などの記載を行い、労働契約書でも同様の旨を記載の上、採用時に口頭での確認を行うと良いでしょう。
別紙として、損害を与えた場合の保証人を提出してもらうことや誓約書の提出を求めることも従業員の不祥事防止に役立つのではないでしょうか。
そして、現実に損害賠償をするときには客観的なデータの基づき、話し合って決めるのが良い解決策です。一般的に従業員は企業よりも弱い立場ですので、法律により守られる度合いが高くなります。
しかし、横領など故意に損害を与える行為に対しては企業側も法的な対応をすることが可能です。そうならないためにも日頃からの予防措置がより重要になってくるといえるのです。
(画像は写真ACより)